知りたい!の源

京大卒の塾講師が感じた様々な事を書くブログ

基準の何倍か

突然ですが、四角形の面積がなぜ「たて」×「よこ」なのか知っていますか?

 

面積の"公式"として有名なこの式なのですが、残念ながら公式を、魔法の呪文のようにやみくもに暗記して使うものだと思う原因になっているように思えます。

 

実際にテストで面積を求める時は、公式を使ってとく方が簡単でミスもしにくく、その方がいいのです。

しかし、公式を魔法の呪文だと思っていることで、将来、式を扱う全ての科目が苦手になってしまいます。

公式は単に「基準とその何倍」を示しているだけで、忘れてもすぐ作れる。

この事実が納得できれば、公式なんて頑張って覚えなくてもいいんです。

 

長方形の面積の公式に話を戻します。

 

面積=たて×よこ 

をみて、最初は日本語として理解しようとする

人が大抵でしょう。

日本語に直してみると、

「面積はたてとよこを掛け合わせたもの。」

この日本語が実は大きな誤りなのです。

 

そもそも掛け算とはあるものを何倍かにするだけです。

たてという「長さ」に横という「長さ」をかける、なんて事は出来ません。そんな事そもそも出来ないんです!!

 

じゃあこの公式はなに?と思うかもしれません。むしろ、そう思う事こそ大事な一歩です。

 

この大事な疑問に答えるために、「基準を決める」という全ての土台となる大事な考え方の話をしましょう。

 

「形の決まっていない量を測る」とき、どうやって測りますか?

 

形の決まっていない量。1つは今日の目標である「面積」ですが、面積の前に、すこし単純にして「長さ」を測ろうと思います。

 

目の前に1つの縄があるとします。

これの長さを測るという事は世界中で昔から行われて来ました。

 

例えば、縄は1.5mだとします。

この1.5という数字は、世界中で同じなのでしょうか?どの時代でも変化なかったのでしょうか?

 

おそらく、皆さんは、長さには色々な単位がある事、日本でも昔はメートルではない単位が使われていた事をご存知だと思います。

 

そして、同じ長さでも、単位を変えれば違う数字になる事も。

 

ここで、ちょっと原始時代にタイムスリップしてみます。

 

 

ある村にとある漁師がいます。獲った魚が余ったので、漁で使う網を編むため、長い縄と交換してもらう事にしました。前回は棒10個分の長さでちょうど網を編めたので、今回もそうしようと思っています。自分の村できいてみると、棒10個分の縄を見せてくれました。

 

しかし、どうも前回魚と縄を交換したときのことが頭をよぎります。そのときはもっと長かったはず。今回のはやけに短い。

 

漁師は棒で縄の長さを測ってみました。しかし、10回測ったところでちょうど縄は終わりです。けれど、どう見ても前より短いのです。

 

 

なんか面白そう!と思った方は、ここでこのページを閉じて、理由をすこし考えてみてもいいでしょう。

 

 

 

 

さて、ここで大事なのは10という数はおなじでも、長さは違うという事です。

なぜでしょう。

答えは、棒の長さにあります。

実は、測る時に使った棒の長さ自体が違うのです。

 

 

羊やリンゴなど、形のあるものを数えるのは簡単です。形が決まっていない量を測る時には、基準を決め、それの何倍かで表します。そうすれば比べられます。しかし、その大事な大事な基準は、実は自由に決めることが出来てしまうのです。これを共通の基準にしよう!とみんなで合わせなければ、同じ数字でもバラバラの長さ、ということになってしまいます。

 

現代でもすこし前までは、メートル原器というという物の長さを基準にその2倍なら2m、3倍なら3mのように長さを決めていました。(最新は、より正確な光の進む距離を基準にしているようです)

 

だいぶ遠回りをしましたが、面積の公式に戻りましょう。

面積も、数える基準がないので基準を決めます。昔の人はたてもよこも長さの基準の1mになっている正方形を面積の基準にする事にしました。とても自然な決め方ですよね。この面積を1平方メートルと名付けました。

 

さて、たて2m、よこ1mの長方形があるとします。この面積は1平方メートルの何倍でしょう?

 

正方形が縦に2個分なので、2倍ですね。これは簡単に数えられます。2倍なので単位付きで呼べば、2平方メートルです。

 

縦が3m(3倍)、横が2m(2倍)なら、1平方メートルの正方形何個分(基準の何倍)でしょう。たて3個分の列が2列あるので、3×2=6個(6倍)です。

つまり、面積は6平方メートルです。

 

実は面積の公式は、縦横がそれぞれ基準の長さの何倍か?から、知りたい面積が基準の面積の何倍になるか?をかけざんで出しているだけで、暗記するまでもない当たり前の事です。

基準1平方メートルを、たて1m、よこ1mの正方形の面積と決めたからです。

 

そして、これは基準をメートル以外、例えばフィートなどにしてもおなじ、という事もすぐ納得できるでしょう。

たてよこの長さが基準の何倍か。それをもとにすると面積が基準の何倍かをどうやったら計算できるか。

こうやって考えてあげれば、公式なんて当たり前の事が書いてあるだけです。そして、万一忘れてもすぐ作ることが出来ます。

 

実は、高校までで習う数学や化学・物理などの公式は、大部分が基準の何倍かという当たり前な事柄を示しているだけです。

 

公式は、古来から伝わりし便利な魔法の呪文、ではありません。

当たり前のことが書いてあるだけの公式やその使い方をただただ丸暗記する勉強スタイルは今すぐやめましょう。

どんどん忘れていってしまうので、非常に効率の悪い方法です。

 

かわりに、基準は何か?を考えるようにしましょう。

当たり前の事は忘れにくいし、忘れても少し考えたらすぐ思い出せるので、すぐ忘れる人と確実に差がついていきます。